【本店ストック成虫N6o.48】GX50-yyii68
- YY
- 2023年7月3日
- 読了時間: 9分
更新日:2023年11月2日
GX50-yyii68
2023年6月羽化
前蛹体重27gから
体長72.0mm、頭幅27.2㎜、顎幅6.2mm
※2023年7月2日再計測

もっと高スペックな個体をストックしないのか・・・という声が聞こえてきそうですが、毎年のことなんで今回はスルーさせて頂きます(笑)今年度の68のストックはこれ。一旦2020年の化け物みたいなものを種にすると、もうその後は太いものや異形性が高いものはいずれ出てくるだけですから、しっかりと狙いの形状固定に入れます。これが血統立ち上げの際に数値上位個体を使うメリットです。私は”血統”と呼び始めたら基本的には削ぎ始めます。盛ろうとしません。スペックも少し削いでいきたいし、バルクアップした部分もコンパクトにまとめ上げていきたい。

そういう血統創りの考え方を持っているから、いつまで経っても”系統”が多いんです。性能が固まってきているんで血統と呼ぶことがありますが、KX303もまだ心の中では”系統”。まだ盛れるからね。85㎜くらいまでは見られる気がしています。体長を盛りたいですね、303については。KX8.3もまだ内心では”系統”。まだ盛りたいし、9顎ド完品の世界を見たい。8.3をやっていたら、顎7って細いよこのラインの中では・・・と言えます。ただ、そういうステージに立っているのですから9顎が見たい。それがあの系統たちの魅力。でも、全系統にスペックに対する期待感ばっかりを含めているわけではありません。そして、KX303やKX8.3にもいつかは数値を削る時を迎えさせねばと思っています。9.4の顎ではなくて、9.0でカッコいい個体・・・こんな感じで血を磨けるようになるといいなと思っています。
yyii8.1や、yyii68、GX50-X、yyii294・・・このあたりは血統と呼んでいます。私的にはもう盛らなくてもいいんです。今年のXみたいに盛れちゃうことはありますが、Xにしても形状や仕上がりは格段に良くなっているし、胸部が従来のXと比較し格段にコンパクトになりましたからね。そういうのは血統。こういう勝手な分類をしています。定義をしているのではなくて、カテゴライズをしています。削いでも数値が出てしまうというのは・・・・Xが今年であれば良い例ですが、あんな感じで出ちゃうんですよ、太いのもデカいのも・・・。

68は一旦超異形になっていて、縦横比率は41.7%というお化け比率をたたき出しているから、あんな感じの雰囲気を残しながら不要な部位を削いでいきたい。削いでいきたいというのは、虫の印象をおとなしくするということではありません。もっともっと68らしさをハッキリさせるために、68らしさを引き立てる部分を残し他を削ぐということです。もっともっと派手に、もっともっとカラーがハッキリした血にしていくために、時には時事的に注目を集めている部分だって削いでいく。
こう言えばわかるかもしれませんが、顎7なんて今や普通ですよ。いや、嫌みではなくて、皆さん顎7個体を出してるじゃないですか。誰でも手が届くなら普通。ちょっと前は特別だったかもしれないけど、今は普通です。顎8はまだ特別かもしれない、だけど顎8もそのうち普通になりますよ、多分。
今は極太が流行っています。太くしていくと、一旦同じような形になるんです。今年の我が家の顎9付近のKX8.3を見て頂ければと思います。どれも形が似ていますよね。2017年頃の顎7って、当時を知らない方には信じられないかもしれませんが、あんな形ばっかりだったんですよ。なんかキモチワルイ太さ、みたいなまっすぐな顎が多かったです。だけど、今は湾曲の顎7もいるし、ムキムキメキメキじゃなくてきりっとしたエッジを有する顎7もいますよね。我が家では、顎8で既に自然なr顎のKX8.3が出てきているから・・・・・
今はまだ顎8と言えば包丁タイプ顎が多いですが、顎8が普及して安定してくると、顎8と言ってもいろんな形があるよ、という世界観が生まれてくるはずです。そう、特別だった7は、そのくらいあれば嬉しいという太さに変わり、カッコいい7顎が欲しい、っていう時代に変わってきているのです。7顎の世界はは憧れから現実になり、数値狙いから形状狙いに変わっていきました。最後は形状に帰着するのです。これがホペイの世界のいつまで経っても面白いところなのです。「7出したからハイ終わり」じゃないし、9「出したからホペイで一番」なんてことはないのです。

数値追いかけは、とてもやりがいがあるし、目標意識も明確だし、言い訳ができない潔さがあってスリルが伴い面白いです。ただ、数値の追いかけっこって末端でやらないと注目されにくいんですよ。今だったら不全でも良いので顎8は出しておかないと。そして、その”末端”のレベルがどんどん先に行くんですよ。だから言葉にすると段々単調になってくるんです。毎年「より太い個体を」と言っているイメージ。レコード狙いってそんな世界じゃないですか。次は●●.●●mmを!みたいに。同じように数値を追いかけているんだから、極太とか縦横比率って次は●.●mm顎!次は〇.〇mm頭!、次は頭部比率〇〇.〇%!!って上へ上へという観点しかない世界だし、今トップの数値はいくつなの?という末端だけが注目される世界です。

ここがジレンマなんですよ。確かに数値って、とてもよく見られるんですよね。飼育しているからには、より大きくという気持ちがあるのでしょう。でも、数値の世界の末端にいない限りは、実は形状の方がよっぽどものを言うんです。

だから私は、ホペイの世界=形状追及の世界であると発信し続けているのです。形状追及の世界だから、永久に飽きないし永久に飽きられないんです。
スペック変化に伴って形状が変わるし見た目も変わるから数値は大切です。でかくて太い虫は手に乗せた時の威圧感や存在感もおのずとデカいです。だけど、それだけだと末端個体だけが注目されてしまうんです。
ホペイ世界は、そんなに単純な世界ではなくて、その複雑さと奥行きが面白い世界だと私は考えています。今一番太い個体、今一番幅がある個体、今一番デカい個体だけが注目されるような世界で、皆が最大体長血統、最大顎幅血統、最大頭幅率血統の3つだけに興味を持つような浅い世界ではないと思うんですよ。
私はこんなタイプが好き、あの人はこんなタイプが好きという十人十色があるのが面白い世界なんです。それが100人100色どころではないので、ホペイの世界って楽しいんだと思っています。色んな見どころがあります。それは学んだ方がいいかもしれません。でも、自分がカッコイイ・良い!と思っていればそれでいいんです。色んなタイプがあっていいんですから。それが形状追及の世界だから、複雑なくせに究極にシンプルで簡単なんです。自分の好きなフォルムを目指せばよい。
太さやデカさは、形の一つですが、それ以外にも見どころは沢山ありますし、個体の印象を揺さぶりやすいものがあります。そして、肌質や、各突起の発達や、顎のシルエットや、各部位形状の似合い方など無数の要素が絡み合って一つの個体になっていき、その個体の存在感が評価されるのがホペイの世界です。

このような観点からホペイブリードを見てみると、確かに最大体長を狙うブリーダーが少ないように、スペックの末端だけにスポットライトが当たるわけではない・・・・どの個体の主役になりうる世界だからこその残酷さというか、厳しさもあるんです。
それはカラーです。カラーがハッキリしない虫が一番飽きられると私はホペイ情勢を見ています。トップクラスのスペックを持っていないなら、カラーが薄い虫はすぐに飽きられます。数値でスポットライトを一番浴びるのは、数値の世界ではいつも末端。トップクラスについては、たった1頭とは言いません。形状追及の世界ですから。でもトップ10位には入っている必要があるのかな、とは思います。ホペイのよく見られる部位数値で、トップ10に食い込むような個体達よりも、そうでない個体達方が圧倒的に多いです。そして、その圧倒的に多い個体達の方がホペイの魅力を語る主役であった・・・それがホペイの歴史であるような気がします。そんなホペイの魅力とは、ブリーダーの趣向を反映した個性・カラーの強い個体達が語ってきたことでしょう。
個性っていくらあったっていいんです。あんな個性もあり、こんな個性もあり、そういう形状個性追求の世界がホペイの世界でしょう。個性に好き嫌いなんて、あって当たり前なんです。湾曲が嫌い!でもいいし、ストレートの良さが分からない!!っていうのだって形追及の世界の面白さです。で、そのカラーはできる限りハッキリしていた方が良いんです。
だから68は数値で親選別をしないのです。数値は、血統がこれまで辿ってきた道を振り返ると・・・・次世代でそこそこは出てしまうと思います。来年も顎7中盤超えくらいはサクッと出してきちゃうでしょう。でも、yyii68に求めたいものはそういうのではない。そういうその時の時流のウケ狙いをしたら、時流が変わった時にカラーがぼやけた68は生き残れません。それは68に限った話ではありませんがね。
で、68に私が求めたかったのは頭部のちょっと間抜けな感じ。それ以外をそぎ落としたい。今年度23yyii68を凝視してひたすらに考えました。ちょっと間抜けな感じっていうのはどうやったら出るんだ!!と。頭と複眼の付近に何かがあるんだろうなとは思いました。複眼幅=頭幅と一般的には言われていますが、我が家の個体達は複眼よりも上の部分の幅の方が広いものがいます。眼下突起の幅が頭幅最大数値を取る個体もいます。複眼幅を一番狭くしてみよう・・・そうしたらかなりの間抜け顔に見えるんじゃないかな・・・今は大体そんなイメージを持っています。yyii68の初代が持っていた何とも言えない不自由そうでお惚けな感じは、禍々しいフォルムに対する良きギャップであり、チャームポイントでした。それを、あの個体の唯一感で終わらせたくない。眼上突起などの突起の発達ではなく、頭の端付近の面盛り・・・これをyyii68のカラーとして濃くしてみたい。そういう構想が芽生えてきました。
だからこの個体。
一番眼下突起の幅が広くて、眼下突起の面が広い個体。
複眼より上の顎基部付近の頭部がモコモコしている個体。
そして、GXらしさをきちんと残した個体。
TP:EやHO8という今となってはレア系統・・・という血のエッセンスが醸す独特な雰囲気を体現しつつ、狙いの部位発現という個性を色濃く打ち出している個体がストック個体です。

さてさて、この個体、ちょっと上翅の皺が残念ですが個人的には非常に良い・・・・カラーがハッキリしていると感じます。いい感じで削げてきたぞ~~と思います。数値もかなり、思った通りのバランスでした。頭幅率も高めでしたしね。ただ顎がな~・・・顎がちょっと華奢・・・・ここは盛らないと・・・・(あ:矛盾)・・・・そうそう、正直に言えばこの個体は”親”として選別しているから、鑑賞用として顎は物足りないと思っています。
でも取り組みは矛盾していませんよ。顎はね、次世代で太いのが出てくるから大丈夫なんです。そして、こういマインドができると本気で削ぎにいけますよ。極太が流行っていても顎細い親を残せる。そしてカラーを濃くできる。
だから代々の親選びは妥協しちゃいけない。こればかりは、この個体を親にしたことではなくて、この個体よりも前の選別がものを言っているわけです。だから23-yyii68の選別も妥協しない。あの時のあの選別が私に「顎はどうせ太いの出てくるから」と言わせているように、数年後、この23-yyii68の選別が、「あの時太さにブレ無くてよかったわ、そのおかげでどうせ次世代〇〇でしょ」と言わせるわけですから。