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【本店ストック成虫No.19】KX8.3

  • 執筆者の写真: YY
    YY
  • 2023年6月19日
  • 読了時間: 8分

更新日:2023年11月2日


2023年6月羽化

幼虫最終計測体重32g

体長77.0mm、頭幅29.4㎜、顎幅7.3mm

いかがですか?極美個体です。最初にスペック出す書き方やめときゃよかったな~と公開しています。スペックはちゃんと書きますけど、最後に書けばよかった!読者の皆様にしたら、そっちのほうが面白かったんじゃないかなと思います。「おー、迫力!」「おー、個性!」・・・で、どのくらいのスペックなんだろう・・・・??こういう思考のプロセスになることが多いと思うんですよね。最近はちょっと、スペックが先行している節がありますが・・・形ありきの世界ですからね。この体裁で始めたので、このままいきますが。。


形状の方向性・バランス・雰囲気・・・トータルで見て、かなりの極美個体です。が、スペックはかわいらしくない数値を持っています。実際に手に取ると、もう少し美しく見えます。そして、もう少しスレンダーに見えます。ですが、画像にすると写真は正直なので、「ああ、確かにかなりの横幅を有している個体だな」と認知することができます。


もう何万ホペイを見てきたんだっていうくらいホペイ漬けの年月を歩んできましたが、それでも未だに難しいなと思うのが脳内補正が働くことで・・・・写真を撮りまくって見まくるのはその脳内補正を働かせないようにして、ありのままのその個体を見る能力を高めたいからというのは間違いなく、ありますね。最初の方は、写真にすると胸部や頭部のゆがみなどに気づく、ということがありました(今は写真にせずとも気づけます)。そういう不整合を無くしていったことは、間違いなく我が家の虫たちのスペックアップと変態能力の高さにつながったと感じています。均整がとれていないと数値を乗せられないし、均整がとれていないと左右非対称に蛹化羽化するからです。

この個体は肌質が綺麗で、稜線もキリっとしており、どこかが過剰に膨張しているような雰囲気も無いので、手に取ると繊細美形という雰囲気を感じます。そういう脳内補正が働いて、肉眼で見ると少し細く見えていましたが、数値を測ってみて写真にするとまぁ確かにそのくらいはあるね・・・という見た目をしています。


こういう意味深な個体っていうのは好奇心を掻き立てるので、横から見てみたくなりますよね。横から見た様子が以下の画像です。うん、凄く扁平で幅広い。


肉眼で見た時の感覚に近しい画像は以下の画像です。これは少し光量を落として撮影しました。そうそう、撮影は虫の造形がはっきり写るように屋外で行いますが、鑑賞は室内で行うことが多い。当然光源も違う訳ですから、虫の見え方も変わってくる。こういう明暗がはっきりした個体は(コントラストがあるっていいですよね)、暗の部分が個体を時に引き締めて見せるので、やや細身に感じていたのかもしれません。体幹的には78mm、28.4㎜、6.8㎜くらいの感覚でした。

さて、今回は前回提示した矛盾を回収するのでした。


予想外れで申し訳ありませんが、矛盾していることをロジカルに直そうとは思っていません。そもそも、矛盾していることや相反するものが共存していることに美があるというのは当方のホペイの美しさや魅力についての軸の一つでもあります。3年前にはそれを一応ブログに書きだしています。


【矛盾の調和】


例えば、切れ味だけ鋭い個体はなんだかギスギスしているので私は好きではありません。シャープで太い!とか、シャープで柔らかい曲線を有しているとか、そういう2つくらいの要素が調和するととても好ましいと感じます。それは「個」を見た時に考えていることです。だから、美しいだけとか、太いだけとか、バランスが取れているだけっていう個体には、私はそんなに大きな魅力を感じません。その先に行って、あまりにも太すぎるとか、バランスがイカれているとか、美しいとは何か考えさせられるような突き抜けている個体達は、物差しの圏外の個体として大好きですけどね。


ただ今回は個の話ではなくて血統というグループの話をしているのでした。グループで見た時にも、そういった矛盾や相反するものが上手い塩梅になっているものに私は血統的魅力を感じます。完全に同じような個体が量産される真の金太郎飴血統なんて見たことがないので、優良個体率が高いにしろ色々な個体が生まれるのはそれは確かにそうだと思っています。超累代指数が高い湾曲血統とされるものからもストレートや眺めの顎は出るし、有名●●血統からはみな同じ個体が出るのかというとそんなこともない。だから皆さん毎年毎シーズン”補強”を繰り返しているんじゃないですか?


私は、従って”有名血統”と呼べるものになっても、その中にはバラつきはあるものだと考えています。なので、私は別にバラついたって構わないと思っているし、それが割と普通だと思っているので、「流石●●血統、優良個体ばかり」という文言には、優良個体しか見てないんですね、という感想が先行してしまいます。「流石●●血統、上位個体は粒ぞろい」なら分かります。「流石●●血統、過半数の個体に××な特徴が見られます」こういうのも頷けます。上位もいれば下位も出てくるし(個人の好みの物差しで測った場合の話です)、違った方向性のシルエットの虫も出てきます。ただ、魅力が少ない個体が少ないというのが望ましいなというのは感じていて、バラついても優良個体が多いという状態を私は優良な血というように自身に落とし込んでいます。バラつくし良い個体が多いというのとは、表現が近しいだけで意味がかなり違うので気を付けてください。バラついたとしても、どっちに振れても個体はカッコイイよね、という状態が望ましいということです。



KX8.3は、9レベルの顎のイメージが先行してしまっているとは思いますが、こういう美しい個体も結構出してきているんですよ。そして、それらがとてもカッコいいんです。美しい側に振れても構わないということですね。


そして、このKX8.3をグループとして見ると、

・キャラが立ちまくった超個性個体

・スペックがぶっ壊れた極太顎個体

・極美個体極上バランス個体


こういった「よし」とされるタイプの個体をきちんと揃えているグループであると言えます。そういえば、KX8.3のストック個体紹介って8頭目になるんですよね。そんなに来年量産するのかと言われると、イヤスミマセン・・・・。「なるほど、種親をキープしているだけではなくて、データとして個体をキープしているのですね。だとすると、販売や放出を躊躇されるのでは?」ということを言われてドキッとした今年でした。そういうことです。この極美個体を種にするかどうかは後で考えます。まず、こういった振れ幅の大きかった個体を保持し、よく観察し(鑑賞)、グループの全体評価を考えます。その分析を以て、どの個体が親適正が高いかということを考えていきます。もちろん、先の回でほのめかしたように、2023年羽化のKX8.3というF2グループだけではなく、過去のGX50のアタリ親なんかも振り返って複合的に考えていく訳ですが、そこまで書くと複雑すぎるので、今回はこのF2の代に絞って話を進めますが、今年度のKX8.3-F2というものはいったいどういうグループなのかというのを、個々を見て分析するということですね。データにできないことも多いので、考察するという方が良いかもしれません。


そして、このグループには超個性個体、超スペック個体、極美個体がきちんとそろっていることが確認できたということです。極美極上バランス個体が出ないような血は、スペックアップには向いていません。既にアンバランスにしかなれないような不自然になっているのですから。自然で安定しているからこそスペックアップがあるというようには考えています。


キャラが立った個体が出ないような血には、少し魅力が欠けるのかなと考えています。ブリードを続けていると、たまにレアキャラとして変なのが出るよ・・・という血って結構個性が強いことが多いです。


ですから、個を見ると、極上バランス&超異形アンバランスというのは訳が分からないし辻褄が合っていないような言語に見えるかもしれませんが、系統、つまりグループとして見るとそんなにおかしなことではないよ、という話になってくると私は考えているのです。


加えて・・・・



こうやって縦や横に並べてみると、実は似ています。それも、かなり似ているのです。今回紹介の美し個体と、前回紹介の異端くんは、ベクトルがかなり異なるように感じられますが、実はかなり近しいんです。振れる方向が少し違っているから、個体の表情がかなり変わっているだけなのです。


このようにして、色々なものが混ざっているグループである系統は、どんな因子が混ざっているかということの総合で評価されると過不足無い評価になるように考えておりまして・・・


木を見て森を見ずという言葉がありますが、個ばっかり見てないで全体を見ようよということですね・・・・それだけだとちょっと足りないなと思うわけです。特定の目立った個だけ見ていても血は理解しきれないんじゃないかな~と。でも、森を見ましょうとも思わないわけです。系統の総合評価ばっかり考えていると、個性がどこかへ行ってしまいそうです。やっぱり、個体を見ることは大切なので、木を見ることは大切なのだと思います。でも、それが木々だとよろしいのかなと。木々を見て森を把握しましょう見たいな感じで、


「そりゃ木々をみたら森を見てるのと同じでしょう」

と突っ込まれそうですが、

「その通りで、過不足無い表現をしているつもりなんですが何か問題ありましたか?」

というのが私の考えでして、上手いことを言う・奇をてらった表現をするのではなくて、過不足無く適切に言語化できているかを重視しているので、「そのまんまじゃないか」という言葉が返ってきたときには、適切に伝わったようで良かったな、という感想を持つわけです。



読み物、まじめに書いていますが、それにしてもこの個体、理屈抜きにしてもカッコいいですよね。



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