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譲渡不可【24本店ストック成虫No.51】♠7.8④

  • 執筆者の写真: YY
    YY
  • 2024年7月2日
  • 読了時間: 10分

更新日:2024年12月16日

今年度は詳細については虫で語ろうというのがテーマです。血統・系統・虫は正直です。個体紹介についても、多くは虫に語ってもらおうというのが2024年のホペイフリークのスタンです。尚、本年度の系統一覧については以下によりご確認ください。


ホペイフリークのYoutube

2024年度系統紹介


今回ご紹介するのは以下の個体です。

【生体情報】

◆種類:ホペイ/ホーペ/ホーペイオオクワガタ

◆学名:Dorcus hopei hopei

◆産地:福建省北峰

◆累代:F2(同腹兄弟姉妹同士交配純インラインブリード)

◆血統名:♠7.8(A7.8)

◆グループ:♠7.8(A7.8)

◆系統番手名:♠7.8④(A7.8④)

【血統内訳】

およそ以下のような血統を内訳としています。

※当店の単位の基準で記載をしています。目的は「きちんとしたホペイ種であるという信頼が持てる単位」です。→交配において重複する血統や系統があります

※記載している以上の情報を個人単位で提供は致しません

・TP:E

・HO8

・劉備

・張飛(A160含む)

・皇帝

・TT2A

・SAX

・極峰



♠7.8④

体長:77.0㎜

頭幅:27.1㎜

顎幅:7.7㎜

顎厚:5.7㎜

今年度の♠7.8系では、全番手で超顎特化形状の個体が出現しています。とにかく顎が恐ろしく太い。蛹の段階から、本体にまったくバランスが合わないようなおお顎を有しています。これらのタイプは、多分日本で一番顎体積がある個体群であると感じております。


顎幅については、計測まで行ったものは未確認ですがもっと太いものはいるようですが、縦横比率を著しく低下させるほどに顎が長い上に顎が7後半に余裕で達し、顎厚も6台まで出現する♠の顎の体積に匹敵する顎ホペイオオクワガタ個体群(血統)を当店は他に知りません。

実際に顎7後半を複数誕生させると、”超極太”に分類される顎7後半クラスであっても、他部位とのバランスや、おお顎の長さによって、どれほど太く見えるかは違ってきます。当店のホペイ達は、大台に乗っているものは計測動画を乗せていますから、そこで正しい数量的感覚は養ってください。嘘をつくことはよくありませんが、虚偽情報が出回ることはどうしようもないことはホペイに限らずある程度は周知でしょう。その上で、計測文化が薄いホペイについては数値の一人歩きとバーチャルな世界観が蔓延しており、これは問題であると感じておりますから、きちんと計測をしている当店の虫でホペイ愛好家の皆様は末端数値を有する個体達のサイズ感や見た目について、正しい感覚を養った方が良いです。当店でお買い物をしていただくかどうかに関わらず、ホペイを入手する際に正しいサイズ感が分かることは重要です。


写真写りの話ですが、例えば頭30台に乗ってくると顎8はそこまで太く見えないことが多いです。顎7中盤程度はハッキリ言って細く見えます。GX50-X(U2)の頭30.7mm個体なんかが直近では良い例で、頭がデカすぎるので7顎が太くは見えませんね。他に、昨年度のKX303の顎8ジャスト付近の個体も、頭が馬鹿でかいことに加え顎が非情に長いのでそこまで太くは見えません。


顎がショートだと太く見え、ロングだとスッキリして見えます。頭の幅が狭いと顎が太く見え、頭の幅が広くなると顎は細く見えます。正しい数量的感覚に加え、正しい脳内補正の仕方も習得していってみてください。注目すべきは頭と、上翅です。上翅を傾けて頭を上げて写すと、頭部とおお顎が格段に迫力を増して写ります。頭を下げて写すと、内歯が外歯を飛び越えて見えやすくなります。適切な数量的感覚と脳内補正能力を持っていると、ホペイを入手したときにがっかりしません。ベストなのは、頭が水平で、上翅も全体がハッキリ写る程度には水平になって撮影されていることです。



♠7.8は、おお顎が非情に長いです。これにより、縦横比率がかなり低下します。縦横比率というのは、体長に対する頭幅の比率です。ですが、おお顎が非常に長いことによって縦横比率が低下しているわけですから、実際は頭が小さいわけではありません。とはいえ、頭が馬鹿でかい個体群でもありません。頭が超デカい個体群をお求めでしたら、8.1M系か68系がおすすめです。


縦横比率についても、正しい感覚を持っておいた方が良いです。例えば、頭がデカく比率も40%を超える個体を輩出する当家において一番の人気を保持し続けているGX50-Xは、長くに渡って頭幅の縦横比率は当店のホペイのなかで小さい方でした。それによって、おお顎が立派に見えました。おお顎が立派に見える個体の方が時流的にウケましたから、Xが神格化されていったのはあるでしょう。初代でも、他系統の個体が簡単に頭28㎜台を出してくる中で、頭28台が少なかったのがXでした。このように、頭幅率が低いからといってカッコ悪いわけでもないので、数値を盛って盛って盛ってという飼育をしている限り虫の完成度は雑になります。その形状に似合った数値バランスを取ることが大切です。♠は、おお顎を長く見せ、おお顎を太く見せるという・・・相反する性質を上手くまとめ切っており、コンパクトなボディーと標準的なサイズの頭がそのあたりを調和させている系統です。このあたりは、中々狙って実現できることでもないので、狙いこそしましたが、虫の方が針の穴を通してくれたなという気持ちも持っています。


例えばですが、たまに、頭でっかちでロング顎で顎太を狙いたいなんていう声を聞きます。「う~ん、7の完品すらあまり見てないレベルかな?」と思うことがあります。「ストレートについては理解不足だな」という感想を持つことがあります。というのも、頭でっかちになると、顎の間隔が開きますから、顎が寸詰まりに見えやすくなってしまいます。頭はやや控えめで、顎の距離が近い方が顎は長く見えます。その上で、大台の7位があると、まぁまぁ太く見えます。狙っているなら、そういう数値感覚が言動に伴うはずなのにな、と感じます。もちろん、目標は高く!ということであればそれはそれで構わないと思いますがね。


いずれにせよ、数量的感覚や、形状の違いによる見え方の違いの感覚は本当に大切です。様々なタイプを飼育したことがある身からすると、最近は数値の塩梅が全く合わない見た目の虫が世の中に多すぎます。SNSはバーチャルな世界で良いと思っていますが、虫を入手する方としては長い間その虫と付き合う訳ですから、勉強すべきとは言いませんが勉強するほうがおすすめです。


「顎8が出ていると思っていたその血統が実はマイクロ極太だった」なんていうことがあると、4代もやってしまうと10年くらいを棒にふることになります。どんな血統でもいずれはレベルアップします。でも、その代でどのくらいの上限がいるのか・・・・その上限個体の存在はバーチャルではなくてリアルか・・・そのあたりを勘繰れる程度には、数値の感覚を適切に持つことは大切です。


再三になりますが、今年度は折角計測動画を多数上げているので、末端数値の個体の見た目がどうなのか、その個体の数値バランスはどのようになっているのかを複数見ながら、過不足無い感覚を養って頂ければショップブログで情報発信をしている身としては嬉しい限りです。冒頭の通り、虫に数値も語らせています。正直な写りを見ながら、正しい感覚を身に着けてみてください。

顎幅については遠近法など色々写し方を工夫することで太く見せることができます。このバーチャルな世界観と、リアルな顎のサイズ感の乖離をどう埋めようかというのはこの6月いっぱいで悩んだところでした。結論として、あまり接写はすきではないのですが、顎厚のアップを公開して見ることにしました。

顎の厚みについては、真横から写すと盛ることが非常に難しいです。なぜかというところはまだ掘り下げていませんが、超極厚顎については真横から撮影すると盛って写すのが難しいです。


今年度は厚みが強い個体が多いですね。8.1F、♠7.8、そしてX・・・このあたりが大筒おお顎を有しています。68も超分厚いですが、基部付近が爆発的に体積を持つ独特の形ですから、またどこかで接写を公開したいものです。8.1Mは一番太くなれているだけあって、一番スッキリしている様子です。このあたりも塩梅です。何が是とされるという話ではなく、適切な塩梅が大切だということです。めちゃくちゃ幅が太い顎が欲しかったら、少しは顎厚は譲歩した方が効果的。結局、体積でどうかということなんでしょうかね。


当店の血統の何がスペシャルなのかという話をしておきますが、私としては4点だと思っております。


①成虫になるまでの情報収集量の圧倒的多さ

➁種親選別を超ハイレベルの個体群から行う

③数値に左右されない親選別

④形状に関する美的感覚


ご存じの通り、徹底的に立ち会っていますが、そこでの膨大な情報収集に加え、幼虫飼育時にも、幼虫飼育の段階から次世代の種選別をするような記録を行っています(内容は教えません)。昆虫飼育については断言することが難しいことが多く、対照実験ができないことも多いです。そこをカバーするために、当方は徹底的に情報を収集するようにしています。


今年度も不全率は1桁パーセント程度に収まりそうです。それほど虫を仕上げきっています。この虫はレベルが低いから・・・この虫は数値が低いから・・・という理由で立ち会わないということがありません。当店の飼育のベースは愛情です。全ての虫に可能な限り平等な面倒見を行うようにしています。飼育者が倒れたら本末転倒ですから、虫を信じ虫にゆだねることはありますが、妥協して立ち会わないということはないです。飼育としては当たり前のスタンスなのだと思いますが、それは言葉上の話です。実際に500頭を超える飼育規模でそれをやり切るとなると並みなことではありません。難易度の問題ではなく、体力や精神力や健康上の問題です。それをやり切った上で親選別をしますから、同血統でも1代で格段のレベルアップをしています。


ご覧の通り、超高スペックなストック個体が並び、販売個体のスペックや形状も末端のレベルです。その上で、数値に左右されず親選別を行ってきています。結果的に数値が高い親を使うのと、数値で親を選ぶのには天と地ほどの差があります。形に始まって形に終わります。だから、下げるべき数値があるなら下げるという感覚も持っています。時には虫をおとなしくさせるという取り組みもします。全ては、健康で綺麗でぶっちぎりの虫と出会うためです。


最後は美意識ですが、蛹化や羽化を見ていると、理科的に言って「物理」がかなりクワガタムシには働いているように思われます。例を挙げるなら、前胸背板のトゲなども、羽化の段階に応じて皮を引っ掛ける役割を持っていたりしますし、上手く羽化が進まなかったときに皮に真横の断裂が入るような保険も含め・・・・クワガタの変態には物理・・・力学がかなり影響しているように感じています。蛹化時の膨張についてもそうですね。


物理現象は美しいです。乗り物などでも、空気抵抗などの物理を考えると、ある程度力学に従ったような形になっていきますね。ホペイオオクワガタの極太個体や幅広個体は、種本来の形から大きく離れていますから、ワイルド個体が羽化の際に働かせる力学とは異なる力学を何とかする力を有している必要があると考えています。これが私の美意識の一つです。ワイド個体みたいな自然さは求めていませんが、力学的な自然さは求めています。そこには美を感じています。そういうことを体現した個体を残していっています。


まとめるならば、変態過程が滑らかで円滑になるような形の範疇には、絶対に形状を留めるようにすること・・・・・。そして、変態過程が円滑な能力のある個体を選ぶということですね。


こういうことをやった結果、各部位のまとまりがなんとなく自然になって、長時間手に乗せていられる個体が生まれてくるのだと考えています。



♠7.8はド派手でぶっとんだ形状です。絢爛の♠7.8・・・・。時に、虫はその時流の虫たちの能力の圏外に及ぶ発現を見せてくれることがあります。累代飼育のロマンでしょう。そういう領域に足を踏み込むと、虫が苦労をすることもあります。ですが、圏外に足を踏み込んでも、どこかにナチュラルな強さを持って、形状の自然離れをねじ伏せることがあります。本個体はそういう個体です。顎7後半で、スーパーロング、そして極厚という超体積の超アンバランス顎を有しながら、この上翅の美しさ・・・・。


管理ボトルには「絶対種」と記載してある1頭です。

販売交渉にも応じません。

この1頭が、無数のまだ見ぬホペイ達を綺麗に仕上げてくれるのですから。

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